木の枝や木の切り口に鼻を近づけてみると、ふわっと香りがするのをご存じでしょうか?植物には香りを持つものもあります。香り成分(精油)は植物が菌や害虫から身を守るために作り出す揮発性の芳香物質です。また中には精油成分を空気中に拡散させて仲間に危険を知らせたりする木もあるようです。そのほか、香りを空気中に漂わせ、虫や鳥などを引き寄せ、受粉を助けてもらったりなど遺伝子を残すために香りを使ったりします。
では、すぐに揮発してしまう香り成分をどのように凝縮して抽出しているのでしょうか?ここではコウヤマキを例として挙げてみます。
高野山では町中でもよく見られるコウヤマキ。お供えの供花としてもおなじみです。元々はこの供花を作るため、形を整える際に切り落とされたマキの枝葉のリサイクル方法のひとつとして精油の採取が始まりました。切り落とされた大量のマキの枝葉は1か所に集められ、細かく裁断されます。それを蒸留機に入れて水蒸気で蒸らし、芳香成分を蒸発させ、蒸留水を冷却することで精油成分と芳香蒸留水に分離されます。こうやって手をかけ時間をかけ、植物の芳香成分を抽出していくのです。ちなみにコウヤマキの精油を抽出する際は約1000キロのマキ葉から採れる量はわずか約1キロだそうです。植物によっても精油の採取量は異なり、採る季節や地域性、植物の成長度合いによっても香りは変わります。その時その土地に息づく瞬間の香り。植物の生命がダイレクトに感じられます。
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